中世の北飛驒地方を治めていた江馬氏の居館に築かれた庭園遺構。発掘調査の成果に基づき、会所(かいしょ)と塀に囲まれた園池を中心とする庭園空間全体を復元整備したもので、室町時代における庭園文化の地方への伝播を示す重要な事例である。
種別:史跡・名勝
〒506-1121
岐阜県飛騨市神岡町殿573-1
Tel:0578-82-6001
江馬氏の城館跡は、下館(居館)と背後に築かれた高原諏訪城(山城)を中心として、領域内に点在する山城群によって構成され、これらは昭和55年に国の史跡指定を受けている。このうち、下館の庭園区画については、平成29年に国の名勝指定を受けている。
庭園は、発掘調査によって15世紀末から16世紀初頭にかけて完成したものと想定している。会所と土塀に囲まれた空間に景石石組みを伴う不整形の園池が設えられている。枯滝石組みや中島・岩島といった景石群を配し、会所西側に張り出した月見台の正面には洲浜を設けて、多様な意匠と視点を演出している。園池の池底は、透水層から成って枯れ池の意匠を呈している。
庭園の視点場である会所は、往時と同様の庭園景観を楽しむことができる。さらに、詳細な検討によって復元した建物内部の空間は、武家の儀礼や饗応の様子を追体験することが可能となっている。中世の武家文化に触れることができる庭園としても貴重である。