旧津和野藩の城下町において、幕末から明治時代中期にかけて発展、成長した町民の住宅庭園である。表口から裏口に通り抜けられる通り庭の形態をしており、座敷と中央の蔵をつなぐ縁側に沿って、狭いながらも奥行を演出した中庭がある。近代津和野における造園文化の発展を示す庭園である。
文化財種別:登録記念物(名勝地関係)
〒699−5605
島根県鹿足郡津和野町後田ロ213
Tel:0856-72-0005
岡﨑氏庭園は旧津和野藩の城下町において、現在まで残されている約20におよぶ町民の住宅庭園の一つである。岡﨑氏は幕末の嘉永7(1854)年に創業した呉服太物、様端物、小間物を取り扱う御用商人で、「さゝや」の屋号で城下町中心の本町通りの中ほどに商家を構えた。庭園は仏間・主座敷の南から蔵座敷の東面と南面にかけて直角に曲がって巡りながら、奥の座敷へと通じる縁側の南に造られている。正確な作庭時期は不明であるが嘉永6(1853)年の大火の後、建物の改築に伴って現在見られる姿に変化を遂げてきたものとみられる。
隣地と隔てる塀までの狭い帯状の空間に石で組んだ枯滝が設けられ、その南側に石組みとマツやイロハモミジなどの樹木が植えられた築山が造られている。築山は奥に向かって徐々に高くなっており、大きな立石と景石を据えて変化を持たせている。縁側を歩くにしたがって展開する枯流れや築山の意匠と佇まいは狭い空間を広く見せる工夫に満ちている。